�@　黄帝：古代に遡ると、黄帝という帝王にたどり着く。この黄帝は、医学、数学、音楽、農業等の創造者とされる伝説の人物である。こんな万能の人物がいるはずもないが、中国医学の源流がずっとずっと昔にあることはわかる。

�A　扁鵲：実在した人としては春秋戦国時代の民間医である扁鵲は中国医学の基礎を築いた人物の一人と言えるだろう。彼は医術に精通し、望、聞、問、切の四つの診断方法を採用した。望は視覚による診断（顔色、舌苔など）のこと、聞は嗅覚と聴覚による診断（声の大きさや口臭など）のこと、問は問診（患者に症状や経過を聞く）のこと、切は触診（脈診や腹診）のことである。多くの著作があったとされるが伝わっていない。

�B　張仲景：著作を残している人物としては後漢の張仲景 (150-219)が有名である。先人の医学理論や民間処方、長年に渡る自身の臨床経験などをまとめて「傷寒雑病論」を編んだ医学者で、長沙太守を務めたとき、毎月１日と１５日に政庁で庶民の診察をしたことから、薬店で診察をする医者を“坐堂医生”と呼ぶようになったというくらい、庶民にも近い医者であろうとした人物であった。

�C　華佗：後漢末の伝説の名医として名高い華佗(145-208)は、幻の麻酔薬「麻沸散」の発明者と言われている。神医と呼ばれるが、曹操を診るのを断って殺されたという。

�D　皇甫謐（215〜282）：西晋時代の人で、字は士安。自らを玄案先生と号した。鍼灸術の基礎文献として高い評価を受けた「鍼灸甲乙経」を著した。

�E　王叔和（210〜285）：三国一晋代初期、太医令を務めた人物で出身は山西、高平とも山東、済寧であるともいわれる。「脈経」を著した。「脈経」は脈診法についての専門書である。脈診を系統化させた最初の理論診断学についての本としての価値はあります。ああ

�F　葛洪（283〜364）：東晋時代の神仙家として有名。号は杤朴子。若年期に神仙道を修行310ごろ道教思想のバイブル「抱朴子」、医書「肘後備急方」を著す。

�G　陶弘景（456〜536）：梁の人、号は華陽隠居。４、５歳時から神童ぶりを発揮し斉の高帝、梁の武帝から重用された。また神農本草経を整備、校訂し、神農本草経集注の著した。

�H　劉河問(1110〜1200)：火と熱が疾病の主因であるとして、瀉火による治療方法（寒涼の薬剤）を用い、寒涼派と呼ばれる。

�I　張子和（1156〜1228）：劉河間の流れを汲み、汗、吐、下の三法を活用、特に下剤による病毒の排出に重点をおき、攻下派と呼ばれる。

�J　李東垣（1180〜1251）：劉河間と張子和らの治療方法は攻撃療法といわれ、その一派は劉張学派と呼ばれる。攻撃療法（瀉法）を主体とする一派と、温補療法を主体とする。攻撃療法を排し、脾胃を補い体力増進をはかる治療方針（補中益気の説）を唱えた。補土派、温補派などと呼ばれる。

�K　朱丹渓（1281〜1358）：三派の説をうけ、病気は「陽有余、陰不足」の状態であり、陰を補うことに重点を置くべきであると提唱した。養陰派と呼ばれる。李東垣、朱丹渓らの治療方法は温補療法といわれ、李朱学派を形成した。

�L　李時珍：時代は下って、明の李時珍(1518-1593)は自ら薬草の採集に赴いて、実に1892種の薬物(薬草)等を納めた「本草綱目」を編んで、それまでの薬草に関する著述の誤りを正した