医療費の抑制が日本より一足先に既に重要課題となってる医療先進国の欧米では、高騰する医療費抑制の重要なツールとして、ジェネリック医薬品が重要視されすでに十分に活用されています。また、アフリカ諸国などの発展途上国では、高額な治療薬を購入することが事実上不可能なため、インド製やブラジル製の安価なジェネリック薬を並行輸入しています。

■アメリカのジェネリック事情
アメリカでは、「同じ効き目なら安い薬を」という合理主義が徹底されており、ジェネリック医薬品は日常的に多用されています。またアメリカには日本のように全国民を対象とする公的な医療保険制度がないため、国民の大多数は民間医療保険に加入し、高齢者や低所得者は公的保険に加入しています。

民間保険会社は、より安い健康保険を提供するためジェネリック医薬品での調剤を促進するような保険プランを増やしてきており、公的保険についてもすでにジェネリックでの調剤が原則となっています。

さらにほぼ完全な医薬分業で、法律により代替調剤が認められていますので、患者さんが先発品とジェネリック医薬品を選択することができます。 　

■ドイツのジェネリック事情
ドイツでは、医療費抑制策としての1989年の参照価格制と1993年の総枠予算制導入により、ジェネリック医薬品市場は飛躍的に拡大しました。総枠予算制とは、健康保険組合が支払う年間の医療費や薬剤費について、国が上限を定める制度です。医師の薬の出し方を制限し、財政と患者の負担を抑えるのが大きな狙いで、フランスでも導入されています。

参照価格制とは、成分・効能が同じ薬をグループ分けして参照価格（上限）を決め、その価格までは保険で支払われるが、これを上回る分は患者が負担するという制度です。高い先発品を使うと、患者負担が増えるため、ジェネリック医薬品の使用が促進されました。この制度は、オランダ・スウェーデンなども導入されています。

■他のヨーロッパ諸国のジェネリック事情
フランスでは、まだ爆発的にジェネリック医薬品が使用されているわけではありませんが、 代替調剤が1999年に認められてから以降は、年々使用量が増えています。

オランダでは、ジェネリック医薬品処方と代替調剤が奨励されています。ジェネリック医薬品の価格は、先発品と比較すると25％安くなっており、地域によってはマーケットの50％を占めています。 　

■インド等の発展途上国のジェネリック事情 　
インドは世界のジェネリック市場の台風の目的な存在です。この国の特徴は、「先発品の特許を持つ製薬会社に特許料を支払わず、安価なジェネリック医薬品を製造している。」ということです。有名なCipra社を始めとする多くの製薬企業が、ジェネリック薬を大量に製造しており、世界の市場に供給しています。

インドは国内の特許法が医薬品を特許対象外と規定しているために、ジェネリック薬の合法的な生産が可能です。こうしたインドでのジェネリック薬製造が特許権の侵害に当たるか否かで、知的所有権保護を優先する欧米先進国と、人命を優先する途上国の主張が対立しています。