朝鮮人参の主成分はサポニンです。サポニン以外に糖質(主にショ糖)、
アミノ酸などが含まれており、朝鮮人参の香気成分としてはメトキシピラジン
誘導体や、β-シトステロ-ル、脂肪酸などを含有しています。
その他に、ミネラル(無機質)も多く含まれており、中でもマグネシウムは
他の植物の一〇倍以上も多く含まれています。マグネシウムに次いで多いの
がカリウムです。一般にサポニンを含む植物はカリウムも多く含んでいますが、
朝鮮人参はナトリウムの約一〇倍から二〇倍もの多量のカリウムを含んでいます。

「朝鮮人参」の選択方法
生干し朝鮮人参(白参とも称す)― 掘ったばかりの新鮮な朝鮮人参をその
まま乾燥させたものを生干し朝鮮人参といいます。
紅参 ―
掘ったばかりの新鮮な朝鮮人参をそのまま蒸して乾燥させたものを紅参といいます。
紅参は、最初に蒸すことによって朝鮮人参の有効成分がほとんど損なわれること
がないため、生干し朝鮮人参に比較してサポニンの含有量が多いのが特徴で、また、
澱粉がα化されていますので、有効成分が溶け出しやすいという長所があります。
長白山産の朝鮮人参
皮を剥かれ陽光で干される朝鮮人参朝鮮人参の品質といえば、六年根のものが
一番よいとされます。ところによっては四年、五年で収穫してしまうこともあり
ますが、四、五年根は六年根と比べると、有効成分のサポニン量が少なく、
しかも二十種類のサポニンのバランスも不安定ですので、朝鮮人参はなん
といっても六年根を選ぶべきでしょう。

「基源」
科名:ウコギ科/属名:トチバニンジン属
和名:オタネニンジン・チョウセンニンジン/生薬名:
高麗人参(コウライニンジン)/
学名:Panax Ginseng.
ウコギ科のオタネニンジンの細根を除いた根 (白参、生干人参) 。
またはこれを軽く湯通しして(御種人参、雲州仕立て) 乾燥したもの。
人参はその調整法により「白参」と「紅参」に大別できる。もっとも
雲州仕立てのような中間型もある。白参は直参、半曲参、曲参にわけられる。
日本産、開城人参などは直参、豊基人参は半曲参、錦山人参は曲参で、そのほか生産地
により数種の形の人参がある。紅参は細根をつけたまま蒸しあげ乾燥したもの (日本産紅参)
と、細根を除去し圧力をかけて乾燥したもの (北鮮、韓国産紅参) とがある。
「出典」 神農本草経 上品
「別名」 朝鮮人参(チョウセンニンジン)、高麗参(コウライジン)、人蓡(ジンジン)(古名)
「性味」 甘、微苦/微温
「帰経」 肺、脾

「成分」精油0.05% (β-エレメン、パナキシノール、パナキシドール、ヘプタデカー1-エンー
46ジインー 39ジオール、 サポニン配糖体約4% (ギンセノシドなど) 、糖類約5%を含む。
「効能」強壮、強心、強精、健胃、補精、抗疲労薬として広く賞用され、
胃の衰弱による新陳代謝機能の低下に振興薬として用い、衰弱者の胃部停滞感、
消化不良、嘔吐、胸痛、弛緩性下痢、食欲不振などに応用する。
「薬理作用」
大補元気、安神益智、健脾益気、生津。滋補強操作用があるが機序は以下のようである。
神経系の興奮作用、下垂体-副腎皮質経の興奮作用、性機能の増強作用、強心作用・
血糖の降下作用、高コレステロール血症発生抑制・血中コレステロール降下作用、
抗利尿作用、抗アナフィラキシー作用。このほか初歩的な観察によると、Ehrlich腹水
ガンの生長を軽度に抑制し、実験的な胃潰瘍・心筋炎の治療と予防に一定の効果がある。
「応用」
1.消化吸収機能が悪いとき(脾胃気虚)に用いる。古人は経験的に、高麗人参の主作用は
補脾健胃であるとしている。それゆえ、消化器系の疾患(肝炎・慢性胃炎・消化性潰瘍など)
やその他の原因で生じた、上腹部がつかえて苦しい・食欲がない・下痢・嘔吐などの胃腸
機能の虚弱症状には、高麗人参を主薬にして使用する。

2.貧血に用いる。補血薬だけではあまり効果がないときに、
高麗人参などの補気薬を加えると効果がある。
3.神経衰弱に用いる。興奮型(心腎不交)の患者に対し、精神を安定し・
動悸を静め・もうろう状態を回復する。
4.性機能衰弱に用いる。とくに勃起不全型と早漏型のインポテンツに対して効果がある。
「注意」
1.呼吸が粗い・発熱・脈は滑実有力・便秘・尿量が少ないなどの実熱症のときは、
高麗人参を使用してはならない。具体的には、
①.高血圧の患者で頭痛・眩暈・のぼせ・目やに・怒りっぽいなどの肝陽上亢
(肝腎の陰虚によって生じた病理現象のこと)の症状があるときは、高麗人参を多量
に服用すると脳の充血をおこしやすく、ひどければ脳卒中を生じる。
虚寒(陽虚によって生じた寒象のこと)の症状があるときは
使用してもよいが、少量にすべきである。収縮期血圧が180mmHg以上のものは、
どんな型の高血圧症でも服用すべきでない。
②.湿熱によって生じた浮腫は、高麗人参を服用するとひどくなることが多い
(抗利尿作用があるため)。 腎機能不全で尿量減少があるときにも使用しない方がよい。
③.実証の不眠・煩躁に用いると、睡眠障害がさらにひどくなるので使用すべきでない。
2.高麗人参を長期間服用すると、頭痛・不眠・動悸・血圧上昇などが生じることがあるが、
を中止すると次第に消失する。

「同類生薬」
1.広東人参:アメリカニンジンの根を乾燥したもので、カナダ、北アメリカに産する。
別名を「西洋参」「花旗参」などともいう、成分としてサポニン配糖体 5%、
を含み、用途は人参と同様に用いる。
2.三七人参:サンシチニンジンの根を乾燥したもので、「田七人参」「田三七」などともいう。
中国雲南省、広西壮族自治区およびベトナム北部に産する。成分としてサポニン配糖体3~8%
を含み、その主成分はギンセノシドである。主に止血、消腫、鎮痛消炎薬として打ち身、
捻挫、腫痛出血、吐血、鼻血、婦人の崩漏、産後の悪阻、腹痛など諸出血症状に用いる。
また中国では、慢性肝炎、急性肝炎などの肝疾患に用いられている。
「処方例 」
十全大補湯、高麗人参湯、高麗人参養栄湯、温経湯、帰脾湯、呉茱萸湯、
柴胡桂枝、湯小柴胡湯、参蘇飲、清心蓮子飲、釣藤散、女神散、麦門冬湯、半夏瀉心湯、
半夏白朮天麻湯、白虎加高麗人参湯、補中益気湯、六君子湯、紅参丹、通竅など。
「「朝鮮人参」の飲み方法、用法・用量」
煎剤、丸剤、散剤。一般に1~9グラム、多いときには30グラムまで使用する。
朝鮮人参を加工する時は、スライスしたり、刻んだり、粉末にする場合がほとんどです。
スライスしたものや、刻んだものは煎じて飲みます。粉にしたものは普通はそのまま
召し上がることができます。煎じて飲む場合一日分は朝鮮人参のスライスやカット
品五~一〇グラムが適当です。

「朝鮮人参」の煎じ方法:
朝鮮人参を適当量とって、それに水を一日分ならコップ1杯半位(500ml位)の
量をなべに入れ、沸騰するまでは強火で煎じ、煮立ち始めたら、トロ火にして、
その後30分ほど煎じてください。その程度で朝鮮人参中の成分はすっかり溶出
してきます。煎じ終わったら、煎じ汁を二回、三回分わけ、少しの時間が
おいたら、暖かいうちに一回分を飲み、残りは別のコップに入れ、口に
アルミホイルをかぶせ、冷蔵庫に入れて保管してください。飲むたびに温めて
から飲むのは普通ですが、冷たいものを飲んでも構いません。
「朝鮮人参」は副作用や刺激性のないものですので、
吸収しやすいため、なるべく空腹でお飲みください。
毎日その日の分を煎じして飲むのが理想ですが、面倒であれば、二、三日分を
一遍に煎じし、蓋のある容器に入れて冷蔵庫に保管し、
飲むたびに温めてからお飲みください。

「人参酒」の作り方
まず、五〇〇ミリリットルの焼酎をビンに入れ、その中に三〇~五〇グラムの
紅参の切片を入れて、約二週間漬け込みます。切片がふくらむ際に紅参の紅色がぬけて、
美しい紅色をした人参酒ができあがります。白参を使った場合は、有効成分の溶出に
二~三ヶ月もかかり、しかも植物特有のくさみがあります。
また、朝鮮人参の苦味が気になる人は、大棗一〇個ほど入れてください。
大棗の甘味がついてのみやすくなります。
「産地」長白山産。